福島県いわき市の水産会社が所有

  東日本大震災の津波で宮城県気仙沼市に打ち上げられ、震災の記憶を後世に残すために保存するかどうか検討されていた大型の漁船について、気仙沼市の菅原市長は、市民へのアンケート調査で、70%近い人が「保存する必要はない」と答えたことを理由に保存を断念する考えを表明しました。

  この漁船は、福島県いわき市の水産会社が所有する全長およそ60メートル、総トン数およそ330トンの「第18共徳丸」で、震災の津波で沿岸から600メートル余り離れた気仙沼市の住宅街に打ち上げられました。

  気仙沼市では、「第18共徳丸」を震災の記憶を後世に残す震災遺構として保存することを検討していましたが、所有する水産会社が「解体を望む市民がいる」などとして解体に向けた手続きを進めて

  いました。

  このため、市が保存すべきかどうか、市内のすべての世帯を対象にアンケート調査を行った結果、回答のおよそ16%が「保存が望ましい」と答えた一方で、68%余りが「保存の必要はない」と答えたということです。これについて、気仙沼市の菅原茂市長は5日の記者会見で「思ったよりも保存の必要はないという意見が多かった印象だ。この結果によって保存の道は閉ざされたと理解している」と述べ、震災遺構としての保存を断念する考えを表明しました。